神社にある狛犬(こまいぬ)とは、どんな意味があるのでしょうか?よく見ると神社によって種類も異なり、かわいい狛犬はつい写真に撮ってコレクションしてしまいます。
- 実は狛犬の起源は古代エジプトにある?
- 狛犬と呼ぶのは向かって左側だけだった?
- 口が「阿吽」になっているのはなぜ?
など、素朴な疑問にお答えしていきます。
そもそも「狛犬」とは?実は左右で呼び方が違うんです
狛犬とは、神社の参道や本殿の縁側にある木造像または木造像です。実は狛犬と呼ぶのは「向かって左側だけだった」ってご存知でしたか?
向かって右側は「獅子」と呼んでいました。鎌倉時代以降、2つを一対としまとめて「狛犬」と呼ぶようになったそうです。
『枕草子』や『徒然草』にも登場する狛犬と獅子
清少納言『枕草子』では「獅子と狛犬・・・」と分けて記しています。鎌倉時代の吉田兼好『徒然草』でも「獅子、狛犬」の順に書かれており、小型で木造、社殿の縁側に置かれていたことが分かります。
【狛犬の意味と役割】獅子から日本で発展した
狛犬と獅子は異なる霊獣です。獅子はエジプトや西アジアがルーツだとされています。
元々は仏像の足元にいた二頭の獅子(ライオン)から日本で考え出されたもの。インドの古い釈迦像には、足元に必ず2頭の獅子が控えています。
「狛犬が高麗から伝わった」はただの語呂合わせ
狛犬は平安時代(約1,000年前)に日本で考えられました。「コマ」が「高麗(こま)」であり、朝鮮半島から伝わったというのは偽の説だそうです。狛犬に似たものは、朝鮮にはまったく存在しないとのこと。
狛犬の意味と役割は?
狛犬には「邪気祓い」の意味があるとされています。参道の両端に置かれていることから、門番・番犬のような役割も担っていると思われます。
狛犬・獅子とシーサーの違いは?起源は同じでも意味が異なる
起源は狛犬と同じですが、意味が異なります。シーサーはより世俗に結びついています。阿吽で対にもなっておらず、家や村を守る役割を果たしています。
【時代別の狛犬・獅子】種類を大まかに解説!
狛犬と獅子は時代とともに変化し、その形式もどんどん簡略化しています。まずは狛犬の種類を時代別に解説いたします。
平安〜鎌倉時代の狛犬は胸を張っている
古式の狛犬(獅子)像は、以下のような特徴を持ちます。また木造であるため、風化防止のため幣殿の中に安置されているケースがほとんど。
- 胸を張り、視線が高い。
- 胸に大きな鈴をつける(平安時代の狛犬にはない)。
- 両像ともペニスを有する。
- 狛犬はツノを持ち、耳が立っている。
- 獅子はツノがなく、耳が寝ている。
- 狛犬は直毛。
- 獅子は巻毛。
諏訪大社は古式の獅子像を継承しているのでイメージ画像としてご覧ください。他にもすね毛があり、巻き毛になっているのも特徴。
鞠や子供を携える昭和の狛犬
昭和四十年以降は獅子・狛犬は「唐獅子」となり、形も固定化していきます。
特徴は以下の通り。
- 阿形(獅子)は左手に鞠を持つ。
- 吽形(狛犬)は耳が丸く寝ている。
- 頭部が大きく前のめり。
- 口の中を赤く塗る。
【狛犬】左右の阿吽は?意味や牡牝の位置について
参考記事:【埼玉の御朱印】1泊2日完全ガイド!
平安時代以降の狛犬は、左右で阿形(開口)と吽形(閉口)になっています。鎌倉時代までは阿形が獅子、吽形が狛犬と別の霊獣でした。
近世ではツノなどもなくなり、左右の違い口の開き方だけという狛犬も多くなっています。
【位置】向かって左が「吽」右が「阿」
位置は阿吽で異なります。向かって左が「吽」、右が「阿」。昔は右側から読んだため、右から「阿吽」と読むと覚えやすいです。
阿吽には「初めから終わりまで」などの意味が
「阿吽」そのものの意味について。サンスクリット語(古代インドの言葉)は「阿」から始まり「吽」で終わることから、(万物の)初めから終わりまでを意味するといわれています。
また阿吽の呼吸ともいうように、ふたり(以上)の呼吸がぴったり揃うことなども表しています。
かわいい・ユニークな狛犬たち
威嚇式(出雲式)の狛犬
参考記事:【戸隠神社】奥社と九頭龍社の御朱印
尻尾を高くし、威嚇しているかのようにこちらを見つめる狛犬。「威嚇式」「出雲式」と呼ばれ、出雲地方から日本海岸沿いに伝わったとのこと。
参考記事:島根県の御朱印まとめ
笑う狛犬がかわいい
かわいいと怖いの間を進む石造の狛犬たち。いつの時代に造られたのかは定かではありません(調べ次第追記します)。
正視するでぶっちょ狛犬
向かい合って正視している狛犬さん。かなり太っており、何か別の生き物のように見えます。顔はかなりニヤリと笑っていますね。
回せる狛犬(高麗犬)?
新潟県新潟市の湊稲荷神社には、自分で回せる高麗(こま)犬があります。自分の願い事を心に念じながら、男の人は向かって右、女の人は左の高麗犬を回して祈願してください。とのこと。
狛犬のような霊獣・眷属は他にも!狼、兎、牛?
狛犬像と同じように、参道で阿吽形の一対で並ぶ神使・眷属をご紹介いたします。
【狐】有名な「お稲荷さま」
有名な神使といえば、稲荷神社のお稲荷様、つまり狐ですね。
ちなみに写真にある新潟県新潟市の湊稲荷神社は、お稲荷様の前足が麻紐で縛られています。願掛けをしながら麻紐で足を縛り、願いが叶ったら紐を切るのだそう。
参考記事:【13種】新潟県の御朱印まとめ
【狼】三峯神社(埼玉県秩父市)
狛犬と同じ姿勢で対をなす三峯神社の狼。かなりやせ細っています。
参考記事:【埼玉の御朱印】1泊2日完全ガイド!
【兎】調神社(埼玉県さいたま市)
1861年に造られた兎の石像。現在は屋根付きの境内に安置されています。
参考記事:【埼玉の御朱印】1泊2日完全ガイド!
【牛】お寺にも!牛伏寺(長野県松本市)
牛伏寺は御縁起にもある二頭の牛が参道に対になっています。
参考記事:厄除け観音 牛伏寺の御朱印/長野県松本市
唐猫さまも狛犬形式?
長野県大町市の仁科神明宮、宝物館を拝観した時に見つけました。狛犬とは異なりますが、日照りの時に川へ流す雨請いの神様も口が阿吽に開き、対をなしています。
参考記事:国宝 仁科神明宮の御朱印/長野県大町市
神社の狛犬 まとめ
狛犬の歴史は古く、さらに多岐に渡るためまとめるのに苦労しました。狛犬に注目して神社をめぐってみるのも楽しいですね。少しでも参考になれば幸いです。
御朱印や神社、お寺の基礎知識カテゴリにもまとめてあるのでこちらもご覧ください。
今回参考にしたのはこちらの書籍。とっても詳しく載っていてオススメです!
社寺建築を読み解く[本/雑誌] (単行本・ムック) / 相原文哉/著